- 加害者が自賠責保険と任意保険の両方に加入している場合
- 加害者が自賠責保険にしか加入していない場合
- 加害者が保険に加入していない場合
等で損害賠償請求の方法が異なりますので、順にご説明します。
自賠責保険と任意保険とは
自賠責保険(自動車損害賠償責任保険)は自動車損害賠償保障法に定められた強制保険で、自動車と原動機付自転車の所有者は加入を義務付けられています。支払い基準に従い保険金(被害者にとっての損害賠償額)の限度額が定められています。
任意保険(対人賠償責任保険)は、自賠責保険金額の不足分を補う上乗せの保険です。
自賠責保険での損害賠償の項目とは
- 傷害による損害:治療関係費等、休業損害、慰謝料
- 後遺障害による損害:(労働能力喪失による)逸失利益、慰謝料
- 死亡による損害:葬儀費、逸失利益(=就労可能年数に対する稼働利益)、慰謝料(死亡本人・遺族)
損害額を証する書類とは
算定根拠となるのは被害者が自賠責保険会社に提出する損害額を証する書類です。
- 診療報酬明細表
- 施術証明書
- 要付添看護証明書
- 付添看護自認書(近親者・知人が付き添った場合)
- 通院交通費明細表
- 休業損害証明書
- 賞与減額証明書
- その他領収証
慰謝料及び葬儀費は自賠責保険の支払い基準額、逸失利益は支払算定式に従って算定されます。(任意保険会社も、非公開ですが各社の支払い基準があり、これにより算定されます。)
1.加害者が自賠責保険と任意保険の両方に加入している場合
この場合は、任意保険会社が示談代行サービスを付与しているので、被害者は保険会社と損害賠償金額について示談を進めることになります。
しかし、保険会社に任せておけばと考えがちですが、保険会社は極力支払額を抑えたいという思いが働くということを頭に入れておいてください。
主張すべきところは主張し、お互いに納得したところで示談書を交わし、必要書類を渡して、その金額が自賠責保険と任意保険より支払われることになります。(任意保険会社が一括で支払う場合もあります。)
因みに自賠責保険の傷害による損害賠償額(加害者にとっては傷害保険金)は120万円が限度ですので、これを超える損害賠償額は任意保険から支払われることになります。
示談書を交わす前の検討事項
・過失割合は自分の想定と合っているか
過失割合は損害賠償額の減額要因となります。保険会社は加害者側からの情報で判断している場合があり、被害者側の情報、できれば事故調査報告書を作っておき、自分なりの過失割合を想定しておく必要があります。
過失割合については、どういった場所での事故か、歩行者と自動車がどういう位置関係にあったか、等の状況ごとに過失割合をまとめた過失相殺基準表がありますので、参考にしてください。
・後遺症がある場合には、後遺障害等級は妥当か
後遺障害が残る場合は、自賠責調査事務所が審査した後遺障害等級により、労働能力喪失率(逸失利益算定に使用)や慰謝料が決められることになるので、等級の有無、何等級(1級~14級)かは損害賠償額に大きな影響があります。
後遺障害は非認定(認められません)でしたと説明を受けても、保険会社から用意された定型資料を提出しただけで、あなたの症状を説明しきれていない可能性もあります。納得できなければ補足資料を付けて再認定請求(異議申立)をすることができます。
一番軽度な後遺障害等級14級(労働能力喪失率5/100)の自賠責保険金額は75万円、慰謝料は32万円です。
・症状固定後の治療費は必要ないか
損害賠償額の算定は症状固定後に行われ、それ以降の治療費は原則として賠償対象としては認められません。症状固定とは、「これ以上治療しても改善しない状態」のことであり、概ね6か月が目安となります。
治療が6か月を超えると保険会社からは、そろそろどうですかと損害賠償額の確定をせかされることもありますが、症状固定の時期は主治医に症状を良く説明したうえで判断してもらう必要があります。
また症状固定後でも症状の悪化を防ぐ目的で治療が必要であれば、将来治療費として損害賠償額に含めて損害認定される余地もあります。
2.加害者が自賠責保険にしか加入していない場合
自賠責保険の被害者申請
自賠責保険は、加害者と被害者どちらからも保険金(損害賠償額)の請求ができます。加害者が自己資金で損害賠償額(示談金)を支払っているのであれば保険金の受け取りに動きますが、そうでなければ通常は被害者が自ら申請することになります。
申請書類一式を加害者の自賠責保険会社から取り寄せ、必要書類を揃えて損害賠償の支払い請求を行います。被害者申請となりますので、後遺障害がある場合には等級判定に必要な補足資料等も追加可能です。認定等級に納得がいかなければ、異議申立をすることもできます。
それでも納得の行く結果が得られない場合には、紛争処理機関を活用することになります。( 自賠責保険・共済紛争処理機構 、交通事故紛争処理センター、そんぽADRセンター、日弁連交通事故相談センターほか)
3.加害者が保険に加入していない場合
無保険車の自動車事故
無保険車の自動車事故の場合は、自動車損害賠償保障法第71条に定めのある「政府の自動車損害賠償保障事業」によって、自賠責保険と同限度額の損害賠償額を受取ることができます。
業務委託を受けた保険会社に、自動車損害賠償保障事業への損害のてん補請求書ほか自賠責保険と同様の損害を証する書類を揃えて提出することになります。
自転車事故に遭ったら
自転車保険も普及はこれからですので、加入していない場合がほとんどです。この場合には、加害者宛に民法の不法行為に対する損害賠償請求を行うことになります。
加害者が高校生などの未成年が多いと思いますが、未成年については法定代理人である親権者、あるいは法定代理人がいない場合には家庭裁判所が選任した未成年後見人に損害賠償請求し、示談交渉を行うことになります。
紛争になりそうな場合には弁護士に依頼することになります。
4.行政書士がお手伝いできること
行政書士がお手伝いできるのは、加害者と紛争になる前の段階までで解決できる場合です。被害者の要求を書面にて加害者に伝える、そして所定の手続きに従って保険会社に請求するところです。加害者の人物や支払い能力に問題がある、あるいは示談がすんなり進まない等、法的手段に訴えるしか方法がないときは弁護士に依頼することになります。
- 交通事故調査報告書の作成
- 自賠責保険会社宛の損害賠償請求申請書の作成
- 後遺障害等級認定に対する再認定請求書(異議申立書)の作成
- 自賠責保険・共済紛争処理機構(指定紛争処理機関)への紛争処理申請代理
- 加害者宛の損害賠償請求通知書の作成
- 相手の支払が遅いときの督促状
- 示談書の作成(当事者による示談後)
等です。