お店は夜何時まで営業ができるのでしょうか。24時間営業のファミレスもコンビニもありますから、制限は無いのでしょうか。併せて注意すべき点を東京都のケースでご説明いたします。特に住居地域では夜はみんなが寝静まっている時間帯なので、これを邪魔されるのは困ります。
キーワードは「騒音」、「振動」、「酔っ払い」です。

1.「都民の健康と安全を確保する環境に関する条例」(環境確保条例)による制限

環境確保条例第132条に「深夜営業等の制限」があります。深夜の定義は「午後11時から午前6時」です。これには特例を除き、規制基準を超える騒音や振動をその事業所の敷地内において発生させてはならないとあり、次の区域が定められています。

住居集合地域
  第1種・第2種低層住宅専用地域、第1種・第2種中高層住宅専用地域、
  第1種・第2種住居地域、準住居地域、田園住居地域
住居集合地域の静穏を害するおそれのある周囲20m以内の隣接区域

また、第133条に「何人も、夜間(午後8時から翌日の午前6時)においては、道路その他の公共の場所において、みだりに付近の静穏を害する行為をしてはならない。」と定められています。夜の静けさの中では声が響くので、気持ち良くなって、大声をあげて歌ったり、騒いだりしてはいけません。酔っていると余計にそうなりそうですね。

深夜制限営業は、飲食店、喫茶店、ガソリンスタンド、液化石油ガススタンド、ボーリング場、バッティングセンター、スイミングプール、ゴルフ練習場、小売業(売り場面積250㎡以上)が対象となります。また、深夜制限作業として、材料置き場における材料の搬入、搬出その他の作業が対象となります。

第132条・第133条の罰則規定はありませんが、午後11時から午前6時までの間はカラオケ装置等の音響機器等で規制基準を超える騒音が出て違反していると認められるときには警察官が立ち入り、違反行為を停止するように指示し、又は静穏を保持するために必要な措置を取るよう指導することができます。

【深夜営業等に関する規制基準】

1.騒音

種別 該当地域

音量
(単位デシベル)

第一種区域 第一種・第二種低層住宅専用地域、田園住居地域等 40
第二種区域 第一種・第二種中高層住居専用地域
第一種・第二種住居地域、準住居地域、無指定地域等
45
第三種区域 近隣商業地域、商業地域、準工場地域等 50
第四種区域 工場地域等 55

㊟音量は音源の存する敷地と隣地との境界線における音量

2.振動

種別 該当地域 時間の区分 振動
(単位デシベル)
第一種区域 第一種・第二種低層住宅専用地域、
第一種・第二種高層住居専用地域、
第一種・第二種住居地域、
準住居地域、田園住居地域、 無指定地域等

午前8時から
午後7時まで

午後7時から
翌日午前8時まで  

60


55

第二種区域 近隣商業地域、商業地域、準工場地域、
工場地域

午前8時から
午後8時まで

午後8時から
翌日午前8時まで 

65


60

㊟振動の大きさは振動源の存する敷地と隣地との境界線における地盤の振動の大きさ

因みに、デシベルと言っても分かりにくいかも知れませんが、住宅地の深夜の騒音40デシベル~45デシベルは環境省の環境基準に合致したレベルで、「普通」に感じる、静かな深夜の住宅街というレベルと考えてください。また、住宅地の振動55デシベルは環境省の振動規制基準であり、ほとんどの人が揺れを感じないレベルに設定されています。

それでは静かにしていれば、深夜でも営業ができるのでしょうか。もう一つのキーワード、「酔っ払い」が関係してきます。

夜遅くまで、遊んで騒いで、酔っ払って、喧嘩をしたり物を壊したり、人に迷惑を掛けたり、これは騒音という観点以外の点からも、風紀上の取り締まりが必要と思われます。

2.「風俗営業等の規制及び業務の適正化等に関する法律施行条例」(風営法施行条例)による制限

夜中までの営業というと飲食店、酒場、娯楽(パチンコ、ゲームセンター、マージャン)、興行場(映画館、劇場、音楽堂等)、カラオケ店等があります。しかし、お酒や接待(特定のお客様を楽しませる)が絡むと風営法の規制が掛かってきます。

風営法の目的は、

  • 善良の風俗と正常な風俗環境を保持
  • 少年の健全な育成に障害を及ぼす行為の防止
  • 風俗営業の健全化に資するため、その業務の適正化を促進する等の措置を講ずること

です。このために、

  • 営業時間、営業区域等を制限し、
  • 年少者をこれらの営業所に立ち入らせること等を規制

しています。

主な飲食店等の営業時間は次の表のとおりです。

酒類の提供があり風営法規制対象となる営業店は、原則深夜営業(0時~6時)が禁止となります。(環境確保条例の深夜の定義よりスタートが1時間遅くなっています。)

【営業可能時間(東京都条例ベース)】                

  6時~ 10時~ 22時~ 23時~ 0時~ 1時~ 5時~
飲食店(主食提供が主)
興行場(映画館、劇場 等)
カラオケ店(防音設備あり)
喫茶店(酒類提供なし)
酒類提供飲食店(一部風営法規制あり)
酒類提供飲食店(22時まで)
(以下風営法規制対象営業店)
深夜酒類提供飲食店 住居集合地域
深夜酒類提供飲食店 その他地域        
特定遊興飲食店(酒類提供あり)許容地域                  
風営1~3号(料理店・社交飲食店、低照度飲食店、区画席飲食店)4号(マージャン) 住居集合地域

 ✕

 ✕

           

 ✕

 ✕

 ✕

 ✕

 ✕

  〃   延長許容地域              
  〃   その他地域            
風営4号(パチンコ)      
風営5号(ゲームセンター等)         住居集合地域      
風営5号  延長許容地域          
風営5号   その他地域        
店舗型性風俗(除く4号ラブホテル)・受付所営業・電話異性紹介営業  許容地域

店舗型性風俗4号 (ラブホテル)   許容地域
無店舗型性風俗・電話異性紹介・映像送信型


・住居集合地域(第1種・第2種住居専用地域、第1種・第2種中高層住居専 用地域、第1種・第2種住居地域、準住居地域、田園住居地域)とする。ただし、風営4号・5号は近隣商業地域及び商業地域から20m以下の第二種住居地域及び準住居地域は制限地域から除く。
・延長許容地域(風営4号パチンコを除く)は商業地域のうち公安委員会の告示地域(風俗営業等密集地域)。ただし住宅集合地域から20m以下の区域(幹線道路の側端から外側50m以下の区域を除く。)を除く。
・年末年始(12/10~1/7)営業延長許容(パチンコを除く) 午前1時まで 都内全域

【年少者の立入り規制】
・風営1~4号、性風俗、18歳未満の立入禁止
・風営5号(ゲームセンター等)18歳未満の22時以降の立入禁止、18時~22時前において16歳未満は保護者同伴
・特定遊興飲食店 18歳未満の0時以降の立入禁止、22時~0時前において18歳未満は保護者同伴
・深夜酒類提供飲食店 22時以降翌日の6時まで18歳未満の立入禁止  

風営法施行条例のみならず、「東京都青少年の健全な育成に関する条例」によっても、青少年の深夜(23時から4時まで)外出の制限や深夜における興行場等への立入りの制限等が定められています。

なお、風俗営業店は管轄の都道府県公安委員会の許可や届出が必要となります。

  • 営業者が欠格要件に該当しないか
  • 営業地域が禁止区域に該当しないか
  • 営業店の構造設備が基準に適合しているか(明るさ、見通しのよさ、客室の大きさ等)
  • 営業の方法が適切か

などを審査されます。

3.最後に

仕事や勉強疲れの気分転換に、深夜まで遊んだり、お酒を飲んだりしてストレスを解消することは時には必要です。しかし、人に迷惑を掛けないように、また青少年に悪い影響を与えないように配慮しながら楽しむ必要があります。お酒が入ると気が大きくなり羽目を外してしまうこともあるかもしれませんが、遊興の騒音が外に漏れたり、路上で大声をあげたり、喧嘩をしたり、静かな生活環境を害することになります。

それらを事前に回避するために営業地域や営業時間、また営業方法(酒類提供、接待等)について規制があるわけです。なお、営業許可の取得等につきましては行政書士がお手伝いさせていただきますのでお気軽にご相談ください。